第153章 夜は家で待っていてくれ

有岡洋子も頷き、有岡里穂を睨みつけた。

「有岡里穂。お兄ちゃんが躾けられないなら、私が直々にやるわ。今夜、必ず帰ってきなさい!」

有岡里穂はドアノブを握る手に、さらに力を込めた。整った瞳は沈み、冷え切っている。

放たれる冷気が、個室の空気ごと凍らせるみたいだった。

「私は間違ってない。帰らない。……この件について説明するのは、これが最後」

女の澄んだ声が、個室に静かに反響する。

落ち着いた言い方なのに、棘のように刺さって、有岡夫婦の胸をえぐった。

有岡家の人間は、昔から行儀がいい。——ただ一人、有岡里穂だけが例外だ。

有岡幸人は怒りを噛み殺していた。本当は阿部明人の前で感情的...

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